連載小説 その5
連載小説 その4
連載短編小説
春麗の女子会
~SFⅣエンディングからSFⅤゼネラルストーリーへ~
5
「S.I.N.が研究していた細胞爆発について調べていくうちに、あなたのターゲットにヒットしちゃったのよ」
「わたしのターゲット?」
「パソコンの中の彼よ」
「リュウのこと!?」
「そうよ」
アリスはそう言ってわたしを見てうなずいた。
「セスは最先端のバイオテクノロジーによる超人を生み出そうとしているのよ。そのためにはプロトタイプが必要。奴らは有名格闘家を狙って細胞を採取していたけれど、それはまだ実験の段階。セスの本当の狙いは・・・」
「リュウなのね」
「そのとおり。おそらく殺意の波動をデフォルトとした超人を量産化しようとしているのかも」
「そうね、その考えならいちばんしっくりくるわ」
「そしてベガはセスと違って、リュウの肉体そのものを乗っ取ろうとしているの。いわゆるウォークインというものよ」
わたしはうなずいた。アリスは続けた。
「ベガはサイキックの超人。どんな超能力者も肉体の老化と死は免れない。支配者がオカルトに傾倒するのは若い肉体を得て永遠に生きようとするためよ。それで永遠に支配しようとしているのよ、この世界を」
「それだけは絶対にさせないわ!!」
わたしはベガにこの世界を支配させないという思い以上に、リュウの肉体を奪わせないという強い決意を言葉にしていた。だって、リュウの姿で中身がベガだなんて絶対に、絶対にさせるわけにはいかない。わたしは両こぶしを強く握りしめていた。
「そこでひとつ疑問があるの。同門のケンはなぜ殺意の波動を発振しないのかということ。このふたりは暗殺拳をルーツにする格闘家。同じ日本人で扱う技も同じなのになぜリュウだけが殺意の波動を発振するのか。そこを突き詰めてみたの」
アリスはタブレットを取り出して画面にタップした。
「これを見て」
画面には「生命誌ジャーナル」と銘打った記事が写しだされていた。
「リュウとケンは同じ日本人でもルーツが違うのかもしれないと思って調べてみたのよ。日本人はモンゴロイドよ。そのモンゴロイドの中でもリュウは最も古くて特殊な種族なのかもしれないということがわかったの」
わたしはアリスの見せてくれた情報について目を皿のようにして読んでいた。
「縄文人・・・?」
「ええ。リュウの暗殺拳のルーツよりも、リュウというパーソナリティを日本人のルーツから探る必要があるとわかったの。調べてみるとケンのルーツとは微妙に違っていたわ。ケンはモンゴロイドでもコーカソイドのクオーターよ」
アリスはそう言って、再びタブレットから情報を見せてくれた。アメリカのモーニングニュースという記事だった。その表題を見て目を疑った。
(つづく)