連載小説 その4
連載短編小説
春麗の女子会
~SFⅣエンディングからSFⅤゼネラルストーリーへ~
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リュウに内在する類まれなる潜在能力。殺意の波動は負の作用によるものだとすれば、正の作用を起こせばどんな波動を発することができるのだろう。ふとそんなことを思いついてしまった。それ以来、パソコンの画面の中にいるリュウをこうして見つめては、わたしはリュウに正の作用に転じさせられるきっかけは何なのかを思いめぐらせることになるのだった。
「春麗、おつかれさま」
ふいに声をかけられて、思わずパソコンを閉じた。
「また、彼のことでため息ついていたわね」
アリスがにやついた笑顔でコーヒーカップを差し出した。ありがとうと言って受け取った。
金髪碧眼の美女アリスはICPOの化学部門に所属する薬学においてのエキスパートだ。聡明な彼女は麻薬捜査官の現場組にとってはなくてはならない頼もしい存在だ。わたしが上海警察からICPOに出向してきた頃からアリスとは何かと気が合い、公私ともに親しくしている。3歳年上の彼女は信頼できる理系女子なのだ。いつもは長い金髪を一つにひっつめているけれど、仕事を終えると髪を下ろして別人のように変身するのだった。
「アリス。そうじゃないのよ、彼はあまりにも謎が多くて捜査は一筋縄にはいかないのよ。それでため息ついていただけよ」
なぜか焦りと弁解じみた答えをしてしまった自分に赤面してしまっていた。
「うふふ。ねえ春麗、ごはん食べに行かない? 久しぶりの女子会。S.I.N.についての報告もあるの。一筋縄にはいかない彼についてもね」
アリスはにっこり笑みを浮かばせながら肩をすくめた。わたしは苦笑しつつも、パソコンをシャットダウンしてジャケットを羽織った。
「聞きたいわ。ちょうどおなかが空いたところだし、女子会しに行きましょう」
行きつけの店は多国籍料理の創作レストラン。ここに来れば、人種が違う者同士でも嗜好に応じて食事ができる。アリスはポテトにビーフが食べたいだろうし、わたしは麺類やお米が食べたい。それぞれ注文を済ませた。
(つづく)